代表 あいさつ

メディアアンビシャスを立ち上げ10年にわたり代表を務めてこられた山口二郎教授が北大から法政大学へと移り活動拠点も東京に移され、代表の交代を強く希望された。断り下手の私が浅学菲才を顧みず暫時代表を務めることとなった。 メディアアンビシャスの目的は、山口前代表が記された「メディアアンビシャスが目指すもの」の通り不変であり、私も問題意識を共有しているので、そのまま下に転記させていただく。10年前、山口前代表は「メディアが‥特定の世論を形成することに加担しているのではないかという疑いをぬぐうことはできません。」との懸念を表明されていた。その後のNHK会長就任会見で「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」発言(2014/1)以来、テレビキャスターの相次ぐ不自然な交代、総務大臣の放送法4条に基づき「電波停止」発言などによりメディアの自粛ムードが一層深まり懸念は現実のものとなった。メディアの自粛は、民主主義の担い手である市民の知る自由を奪い、権力をけん制する力を弱めることとなる。市民の耳目が次第に真綿で塞がれつつあることを実感してきた10年でもあった。それが昨年7月に至り、札幌で首相の参議院議員選挙応援街頭演説に対し一人の若者が異議申立ての「ヤジ」を上げると同時に、北海道警察が同人を強制排除する事件が発生した。いよいよ市民の耳目が塞がれる段階から、市民の口を権力が素手で封ずる事態に深刻化し、民主主義はいよいよ危殆に瀕する感がそこにはある。 10年にわたるメディアアンビシャスの活動は、一市民団体の情報収集能力の限界からして、必ずしも当該年度日本全国もれなく発信された報道・作品を検討できたわけではないにしても、私たち市民が触れることができた情報のなかでこれぞという志の高い作品を、敬意と感謝を込めて激励し「表彰」させて頂く実践として継続することができた。幸いなことに、この間受賞されたメディア関係者の皆様方は「表彰」を快く受け入れ、その後の報道姿勢を堅持する糧とされる旨述べられていること、メディアアンビシャスの喜びとするところである。 願わくば、全国各地で私たちと志を同じくする市民が、それぞれの地域で志の高いメディアを讃え励ます活動を始められんことを期待したい。私たち市民の人権が守られ、この国の民主主義の主人公であるために。

上田文雄

(※前代表の山口二郎氏=法政大学教授には現在、顧問に就任していただいています。歩み資料①に掲載の「あいさつ」参照)

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