23年大賞の最終選考会を1月27日、愛生舘ビルで開き、参加した会員とメールによる投票、さらに審議の結果、以下のように各賞を決定しました。各賞は以下の通りです。今回は映像、活字ともに「特別賞」が1件ずつありました。受賞一覧に続けて、選考の「概況」を掲載します。なお表彰式は3月9日(土)、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院東アジアメディア研究センターの共催事業として北大学術交流会館で開催予定です。/
23年メディア・アンビシャス大賞 受賞一覧
【映像部門】 | |
▶大賞 | NNNドキュメント「いろめがね~部落と差別~」(山口放送 11月20日STV放送) |
▶メディア賞 | ETV特集「続報 “冤(えん)罪”の深層~新資料は何を語るのか~」(NHK 12月23日放送) |
▶アンビシャス賞 | 「閉じ込められた女性たち~孤立出産とグレーゾーン~」(HBC制作 5月29日放送) |
▶優秀賞 | ETV特集「ルポ 死亡退院~精神医療・闇の実態~」(NHK 2月25日放送) |
▶特別賞 | BBC「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」(ユーチューブ「BBCワールドニュース」など) |
※国内放送局の制作放送ではないため各賞の選考外としたが、日本社会に与えた影響の大きさを考え評価した。 | |
【活字部門】 | |
▶大賞 | 特報部掲載の一連のアイヌ民族レポート(東京新聞 5月14日以降) |
▶メディア賞 | 自民党派閥パーティ券のスクープによる裏金づくりの一連の報道(しんぶん赤旗日曜版 ※22年11月6日以降) |
▶アンビシャス賞 | 連載「鉄路の行方を考える」(北海道新聞 10月3日~) |
▶優秀賞 | 連載「警察庁長官狙撃事件 実行犯はオウムに無縁? 連載Nの記録」(毎日新聞 3月20~23日) |
▶優秀賞 | 連載「追い詰められる女性たち」(朝日新聞 第1部4月11日から8回、6月26日から5回) |
▶優秀賞 | 連載「ワンピースを着て、街へ出た」(朝日新聞北海道面 5月31日から3回) |
▶特別賞 | 連載「海と国境」(北海道新聞 2017年11月~) |
※昨年末現在で658回に及ぶ、異例のロングラン企画。日本と周辺諸国との関係を掘り下げ、資料的価値も高い。 |
【概況】2023年の大賞選考に先立ち、候補にあがった作品のうち映像部門のBBC「J-POPの捕食者」と、活字部門のしんぶん赤旗日曜版による自民党パーティー券による裏金づくり(22年11月6日付け)を選考対象とするべきかどうか論議になった。前者は日本メディアの制作ではなく、放送もBBCの提供するユーチューブ内などにとどまり、通常には視聴できないという指摘である。会員内で論議した結果、番組テーマはジャニーズ喜多川氏(故人)の性癖で済ませられない人権問題であり、被害の広がり、社会への影響の大きさ、さらに日本メディアの「沈黙」をも浮かび上がらせた実績を考慮し、選考対象に残すことになった。結果的には特別賞となった。もう一つの赤旗日曜版は推薦にあがる報道初報が期間対象外の22年11月で今回の選考対象期間を外れるとの指摘だったが、昨秋の東京地検特捜の摘発の契機となり、さらに自民党派閥の裏金問題として政治化する口火を切ったものとして、23年報道に含めて選考評価することになった。
【映像部門】会員らから推薦された候補は総計23本で、例年よりやや少なめ(前年31本)。性や出自による差別をテーマにする作品が目立ち、それも歴史的・社会的構造はもとより人間心理を探る“実験”番組まで候補に残り、差別問題の深まりを感じた。また社会的なニュースも理解を容易にするドラマ仕立ての作品もあった。【活字部門】推薦された候補は25件(同26本)。例年同様に連載が多く並んだ。中でも道新の「海と国境」は昨年12月末現在でも658回と異例のロングランで、その取り組み姿勢自体が審議された。自民党パーティー券に発した「政治と金」問題、またジャニーズ喜多川氏の性加害問題は、報道関係者が知っていても報じない「メディアの沈黙」として通底しているとの指摘があった。入賞こそしなかったが、BBC放送直後からこの「沈黙」を指摘した週刊文春はじめ、報道姿勢を検証するメディアも少なくなかった。(文責・山本)
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